天気のいい日が続くと、無性に出かけたくなる。山に行きたくなる。で、鈴ケ岳という山に行くことにした。この山は、小松市の郊外、大杉町から奥に入ったところにある。行きがけに小松にいる娘に山に行くことを連絡しておく。
大杉町から、大杉谷に入る道は、舗装されているが狭い道。途中キャンプ場みたいな所があり、車が何台か停まっていた。そこを通り越して、どんどん進む。初めての道はいささか不安が伴い、心臓がどきどきしたりする。やがて駐車場に着く。こんな山奥まで道が舗装されていることに驚くとともに感謝の思いが与えられた。
8時7分。教会から、1時間半かかった。静かな場所で、渓流の素敵な音がする。すると車が何台も到着。キャンプ場にいた車だ。20人以上の老若男女が降りてくる。どこかの町内会の人たちか。彼らを先にやり過ごしてから8時半に出発。
スミレサイシンが生えている。途中でこの団体の最後尾を追い抜く。小さな女の子が、もう登れない、歩けないと泣いている。年配の人が怒鳴る。祖父なのだろうか。あそこまで怒鳴らなくてもと思うが。大人から見るとだだをこねた子どもの心をいかに奮い起こすか、どうしたらよいのだろうか。杉林の中を歩いていく。沢を渡る小さな橋が二つある。それらを越えて、尾根を横切るようにして、別な沢筋につくとヌギ谷原。山小屋がある。先の団体の人たちが荷物を下ろしている。ここでゆっくりするみたいだ。水場があり、水を飲む。ここには、広い場所があり、春には水芭蕉が咲くそうだ。この一体には、サラシナショウマが沢山咲いていた。夏霧ヶ峰に行った時も咲いていて覚えた花だ。
すぐに出発。道が濡れていて滑りやすい。登りに入る。ツボスミレの葉が見える。15分ほどで尾根にあがる。あとは尾根を登り山頂まで一筋。ヌギ谷原を過ぎると杉はなく、ミズナラやがてブナの林となる。風があるのか、木の葉がざわざわ揺れている。秋深しという感じがする。道はそれなりの勾配でゆっくり進む。一箇所だけ、急勾配な所があり、そこにはロープが張ってある。ひとりのおばあさんが休んでいる。僕らが近づくとまた歩き出した。リンリン鈴を鳴らしている。辛抱して登ると、急に見晴らしの良いところに出る。
そこから頂上までは、もう急な登りはない。頂上まであと900メートルとある。妻にビデオをとってもらう。僕らがついたと思うまもなく、あの団体さんが登ってきた。一緒に休憩することとなる。男の子が一人、もう登りたくないと言っている。すると一人の男性が、「登ってもらう。嫌々ながら登るか、自分から登るか、どっちかにせい」と語調を荒げて語っている。父親だろう。男の子は仕方なく、自分で登ると語っている。子どもの励まし方はどうするのがよいのか。
団体さんを先に行かせて、登る。途中でヤマブドウがなっていた。おばあさんが我々のすぐ後ろを歩いていたのだが、「ヤマブドウだ」と声を出した。我々も足を止め、ヤマブドウを食べてみた。実は1センチほどで小さい。ややすっばい。そのおばあさんは、別な実を手に取り、妻はそれは○○の実かしらと、おばあさんと話しをしている。そして出発。一つこぶを越えて山頂。11時到着。
途中ずっと風が吹いていたので、汗で背中が濡れているのがまともに風が当たると冷えると思い、木の茂っているところに腰を下ろして昼食をとる。ナシがおいしい。水分が多くて渇いたのどを潤してくれる。おにぎりを一個食べ、ウインナソーセージ、ゆで卵、白菜の漬け物、そしてどら焼き。熱いお茶もおいしい。
目の前には、白山が雲一つ無く、雄姿を見せてくれる。8月に赤兎山に登ったが、見る角度によって形が違う。山頂からの景色をビデオに収める。12時に下山。
ヤマブドウのなっているところで、妻は一房取り持ち帰る。尾根を下るということは、両側は谷ということ。左右を見れば、急な谷となっている。ブナ林になっているので、恐怖感は感じないが、足がよろけて滑り落ちたら危ないな、妻が落ちたらどうしよう、などという思いがちらつく。一歩一歩気をつけながら歩く。ヌギ谷原に着き休憩。残っていたナシを食べ、白菜の漬け物を食べて出発。45分ほどで登山口に到着。靴を脱ぎ、草履に履き替え、出発。帰り道にある瀬領温泉に入り、体を休める。源泉とある。体を休め、家路につく。夕食の時、妻の母は、ヤマブドウを懐かしんでいた。