「Ａ長老、こんにちは」
「こんにちはＢさん」
「この間のキリスト者は新しい人に造られたということですが、これは信じるということなんですね」
「そうです。私はキリストを信じ、新しい人に造られた、新しい人に生まれたと信じます。これは実感できるとは限りません」
「この信じるところから信仰者の歩みが始まるということですね」。
「Ｂさん、わかってきましたね。信仰者として生きるとは、新しい人として生きることを始めることになります」
「そこなんですけどね。私たちキリスト者は神さまの教えを守って新しい人になると考えるのはどうなんですか。このほうがしっくりくるんですよね」
「そう考えると新しい人になることが目標となりますね。つまり私はまだ生まれ変わっていないけど、心を入れ替えて神さまの教えを守る努力をして、新しい人になったと自他共に認められるようになりたいということでしょうか」
「はい、そうです」
「しかし自分は頑張って新しい人になったと思える時が来ると思いますか」。
「来るのではないでしょうか」
「そうでしょうか。たとえば神さまの教えで守るのがむずかしい、いや守るのは無理だと思える教えに出会います。これを行えなかった場合には、自分は新しい人になれないと挫折することが多いと思います」
「たとえばどんな教えですか」
「人を赦しなさいとか、自分の十字架を背負ってイエス様に従うとか」。
「確かに」
「人によって行うのがむずかしいと考える教えは違うと思いますが、苦手な教えは誰にもあると思います。マタイ福音書の5～7章に山上の説教というイエス様の教えがあります。あれを読んで、自分は全部守れると言える人はいないと思います。『あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者になりなさい』という教えがあります。どう思います」
「これは大変な教えでね」
「そうなんです。ですから考え方を根本的に転換するんです。私たちは神さまの恵みによって新しい人にされた。新しい人にされている、これは出発点なのです。だから新しい人として生きていく。それだけです」。
「今、神の恵みによって新しい人にされたとおっしゃいましたね。ただ信じるだけではないのですね」
「いや、ただ信じるだけなんですが、新しい人にされたとはどういうことか、ですね。新しい人とは、神の子であるということですが、神さまを信じて生きる人間に生まれ変わったということです」
「私が神さまを信じて生きる人間に生まれ変わったというのですか？私は神さまを信じると決断して洗礼を受けました。私は自分の決断によって神さまを信じる人になったつもりですが」
「おっしゃるとおりです。でもそれがすべてではないのです。神さまは信仰を強制しません。だから自由な決断によって私たちは信仰に入ります。しかし同時に神さまを信じる決断そのものが、神さまの導きなんです。神さまの恵みなんです。そういう目に見えない現実もあるんです」
「そうなんですか」
「若い時、クリスチャンの婦人から、何人もお見合いの相手を紹介されたことがあります。皆クリスチャンの女性です。私は何で目に見えない神を信じることができるのか不思議でした。その私が信仰を持てたのは、神さまの導きだと思っています。信仰に入る決断は私がしましたが、その決断ができるように神さまが導いてくださったと信じています。ある日の礼拝説教を聞いて、私は信仰を決断しました」。
「そういうことがあるんですね」。
「Ｂさんは礼拝にも出ているし、聖書を読んだり祈ったりしています。それは神さまを信じて生きる人間に生まれ変わっている証拠ということができます」。
「わかりました。それでは新しい人として生きていくとは具体的にどうすることでしょうか」
「Ｂさんはどう思いますか」
「そうですね。神さまの教えを守るということでしょうか」
「そう考えて努力している方も沢山いらっしゃいます。神さまの教えを守り、聖なる者となりましょうと教える教会もあります」
「Ａ長老はどうなんですか」
「私もかつてはキリスト者になったのだから、神さまの教えを守ろうとしました。でも神さまの教えって沢山ありますよね。守るのを忘れて結果的に守っていない教えもあるし、苦手な教えもありました。守れない自分を情けなく思ったこともあります。私には牧師先生から教えられたイエス様の教えがあります。」
「それは何ですか」
「それは山上の説教の中の教えです。『すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ』とあります。新しい人として生きる時、良い木を目指せばいいんです。そうすれば良い実を結びます。良い実、つまり神さまの教えを実行できます。つまり新しい人として生きていると実感できます。これを知って、心が安堵したことを思い出します」
「なるほど。分かりました」
「良い木にどうしたらなれるのか。考えてみて下さい。今日はここまでにしましょう」
