「A長老、こんにちは」
「Bさん、こんにちは。今日もお話しできることうれしいですね。それで今日は?」
「はい、前回は、出エジプトの出来事は私たちのことだということから、私たちは、自分に縛られているのではないか、自分自身からの自由という課題があると聞きました」
「そうでしたね」
「私は今出エジプト記を読み続けています。イスラエルの人々は神さまの助けによってエジプトを脱出しました。そして神さまが連れて行ってくださる土地を目指して旅を始めました」
「そうですね。興味深い旅ですね」
「そうなんです。旅をしているイスラエルの民に困難が生じます。すると彼らは神さまに、具体的にはモーセに文句を言います。なぜ困難に直面するのかと」
「彼らはエジプトにいたときは、奴隷としての苦しみから助けて、と神さまに叫びましたね」
「はい、神さまは彼らの願いに応えて、エジプトで奇跡を行い、彼らをエジプトから解放しました」
「それだけでなく、自由に生活できる土地へ連れて行くと約束されたんですよね」
「はい、それでA長老、イスラエルの民は旅の中で、飲み水がないとか、食べ物がないとか、困難に直面すると不満を言い出すわけです。なかにはこんな目に遭うなら、エジプトにいたときの方がよかったとか」
「エジプトから助けてと頼んだ覚えはないとか、言い出すわけですよね」
「おっしゃるとおりです」
「それでBさんはどう思うのですか」
「イスラエルの民の気持ちも分かります。エジプトから解放されたことはうれしいです。しかし神さまが連れて行ってくださるという約束の地まで旅をするのですが、困難に出会うわけです。神さまが助けてくださったのだから、なぜ順調に約束の地まで旅ができないのか、と思うわけです」
「なるほど」
「エジプトでイスラエルの民は散々苦しい思いをしたのですから、約束の地の生活を楽しみにしながら、楽しく旅ができたらいいのにと思います。それなにの困難が生じます」
「神さまなら、困難が起きないようにできるはずだというわけですね」
「はい。でも、他の思いもあります」
「何ですか」
「エジプトにおいて、神さまは奇跡を行って助けてくれたのですから、困難が起きたのなら、また神さまに助けを求めればいいのにとも思います」。
「なるほど。そうですね。もしBさんがイスラエルの民の一員だったら、どうしますか。神さまに文句を言うか、助けを求めるのか」。
「そこなんですよ。A長老は、出エジプトの出来事は、私たちの物語だとおっしゃいましたよね」
「牧師からそう教えられましたし、そうだと私は思っています」
「私たちもイエス・キリストを信じ救われて、この世の生活をしていますが、神さまを信じていても、困難に直面することがあります。なぜ、こんなことが起きるのか、と不平を言いたくなることもありますし、だから神さまに助けを求めればいいんだと思いもします。助けを求めて祈っても、すぐに神さまの助けが来るとは限りませんが」
「そうですね。神さまが祈りに対してすぐに答えてくださるといいですね」
「でもそうなるとは限りません。すると不平、不満の心が出てきたり、いや、自分は信仰者なのだから神さまに信頼するべきだと自分に言い聞かせたりします」
「そこでどう考えていいのか分からなくなるわけですね」
「はい」
「神さまは、困難に直面して悩んでいるBさんにどうしてほしいと思っているでしょうか。どう思います」
「神さまは、私が神さまに信頼することを願うと思います」
「ではそうしたらどうですか」
「でも私は神さまではありません。私には私の思いがあります」
「そうですね。私たちには私たちの思いがある、その通りです。でもBさんは神さまを信じて生きることを選んだわけですね。なぜ神さまを信じることにしたのですか」
「神さまを信じて、祝福された人生を送りたいと思ったからです」
「祝福された人生ってどんな人生ですか」
「まあ、生活が守られ、家族が仲良く生活できればと思います。ささやかな幸せを持てればと思います」
「お気持ちはよく分かります。うちの牧師さんがたまに語ることなんですが、神さまは自動販売機じゃないと言うんですよ」
「神さまが自動販売機?」
「はい。自動販売機ってお金を入れれば、自分の欲しいものが出てきますよね。つまり、私たちが神さまに願えば、神さまは願い通りにしてくださると考えるのが、神さまを自動販売機と考えるということなんです」
「それはちょっといくらなんでも神さまに対して失礼な気もしますが」
「でもそういうところって、私たちにあるんじゃないでしょうか」
「そうですね。私たちが祈りで神さまに願いごとをしますが、考えてみれば、願いをかねえてくださることを期待していますね」
「私はそれがいけないとは思いません。イエスさまは何でも求めなさいと教えておられますから」
「信仰者が神さまに祈り求めるのは、世界の平和だけであるなどと限定されたらいやですね」
「ではBさん、神さまがあなたの願うことは何でもかなえてくださるとしたら、どう思いますか。これ以上ない幸せ者になりますか」
「これはちょっとむずかしいです。少し考えさせてください」