「A長老、こんにちは」
「Cさん、こんにちは」
「神さまを信じるなら、神さまのことをもっと知ることが大切で、そのためには聖書を読んで神さまがいかなるかたかを知ることが大切と教えられて、しばらく聖書を読んでみました」
「すばらしいですね。それでどうでしたか」
「今回は、マタイ福音書の山上の説教を読んでみました」
「なるほど。それでどうでしたか」
「5章48節に
『あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい』とありました。天の父なる神は完全なお方である、これは分かります。次に『あなたがたも完全な者になりなさい』。
これにはちょっと驚いたというか、無理、無理と思ってしまいました」
「そうですね。まずは神さまを知ることに目的がありますから、父なる神さまは完全なお方であると知ればよいと思います。自分の信じる神さまが完全な方であると知ってどう思います。私はうれしくなります。完全な方なら安心して信じられます」
「言われてみればそうですね。でも完全な者になりなさいに目が奪われて何も考えることができませんでした」
「そうですか。まずは神さまはいかなる方かに注目していきましょう。私は今一瞬ですが思いめぐらしました。Cさんが神さまは完全な方であるとおっしゃいましたね。それで神さまが完全な方なら、どうなるだろうと自分に問いを投げかけました。そしたら私はうれしいし、安心だなと思いました」
「なるほど、自分に問いかけるのですか。なんか面白そうですね」
「他にはまだありますか」
「6章には、父なる神さまは隠れたことを見ておられるとありました。人からほめられようとして人の見ている前で祈ったり、施しをしたりすることがありますが、天の父は隠れたことを見ておられるのだから、人からほめられようとして何かをすることはやめなさいとイエス様は教えられました」
「人って、自分がしていることを他の人に認めてもらいたいと思いますよね。それを隠しなさいとイエス様はおっしゃいます。Cさんは、自分の行いを人に認めてもらいたいという思いがありますか」
「ないとは言いません。人に認めてもらおうと強く意識して行動をしたことはありませんが、自分がしたことを誰にも知られないようにするというのもなんだか、抵抗を感じます。心のどこかで認めて欲しいという思いがあるのかもしれません」
「それでどうですか。隠れたことを神さまは見ているというのです。神さまがあなたの行いを見ておられるので、人からほめてほしいというような思いを捨てなさいとのイエス様の教えです。でもイエス様の教えは横においておいて、神さまはあなたの隠れた行為を見ておられるというのです。どう思いますか」
「悪いことはできなくなりますね」
「では人から認めてもらいたいという思いはどうですか」
「A長老はどうなんですか。どうですか、どうですかと言われると困ってしまいます」
「そうですね。申しわけありません。でも父なる神さまがどういう方かを知って、自分に問いかけていく、これが思いめぐらすことといってよいと思います。私の場合ですが、私は説教で、イエス・キリストが自分を無にされたと聞きました。フィリピの手紙にあります。聖書を開くのでちょっと待ってください。
『 キリストは、神の身分でありながら、神と等しい者であることに固執しようとは思わず、かえって自分を無にして、僕の身分になり、人間と同じ者になられました。人間の姿で現れ、へりくだって、死に至るまで、それも十字架の死に至るまで従順でした』
この聖句についての説教を聞きました」
「イエス様の謙遜について語る聖句ですね」
「自分を認めてもらいたいという思いが私にはまったくないとは言いません。そういう思いが時に出てきます。そこで戦いです。その時は、自分は何を大切にして生きているのかを確認します。私はイエス様に倣う者になることを大切にしたいと考えているので、そのことを確認し、認めてもらいたいとの思いを捨てます。そんな戦いを繰り返しています」
「死ぬまで戦いは続くのでしょうか」
「そのうち勝利すると思います。そんな気持ちは出てこなくなると思います。私は聖霊の導きを祈って聖書を読み、私の歩みを導いてくださいと祈っています。聖霊が私を導き、心を清くしてくださると信じています」
「A長老は、聖書を読み、思いめぐらし、時に戦って歩んでこられたのですね。神さまを知ることは、自分自身の考え方、生き方を吟味することにもつながるんですね」
「その通りです。こういうことを繰り返す中で、聖書の言葉に従う思いが心の中で強くなってくると思います。うちの牧師さんも、口癖のように『大事なことは忠実であることだ』と言っています。戦いから生まれた言葉ではないかと私は思っています」
「今日は、神さまのことを知ったら自分に問いかけてみること、それが思いめぐらすことだと学ばせていただきました。その思いをもって聖書を読んでみたいと思います。またお話しさせてください。ありがとうございました」
「ではお元気で」
「A長老も」