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←辰巳芳子さん

　先日、NHKのBSで＜天のしずく＞という映画を見た。何気なくチャンネルを変えたとき、「タマネギというのはね、油を引いて熱くなった鍋に入れてはだめなのね。熱くなる前にタマネギを入れて油を注ぐと、まんべんなくタマネギに油が行き渡るの」。言葉は正確な引用ではないが、このようなことを言っていて、興味がわいて見続けた。料理研究家の辰巳さんに関わる映画であることが分かった。

　この番組の中に流れてくる音楽を聞いていると、涙が出てくる。僕の心の琴線に触れる音楽。そして味わい深い辰巳さんの言葉。ゆっくりした時間の中に生きることの大切さを思わされた。それで僕は、飴色タマネギを時間をかけて作った。昼食にこれを使って、スープとトマトソースをつくり、ブロッコリーをゆでてパスタをつくった。

年を取り、残された時間が少なくなるから、その時間をゆっくり過ごしたい。ていねいに生きていきたい。年をとったので、あわてて急いで生きる必要はない。