クリスチャンが元気になる holalaのブログ

隠退牧師 holala によるブログ

 目的は手段を正当化するのか


 どんなに正当でよい目的であろうとそれを達成するための手段は何を用いてもよいと主張することはできないと思います。何を用いてもよいとするなら、それは独裁を生むことになります。


 安倍晋三首相は、自分の政治信念を実現するために、憲法の改正の必要を感じました。そこで憲法を改正する場合、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で発議しとあるのを二分の一の賛成を得ればよいとするように変えようとしました。しかし世論がこれに反対したためにこの96条の変更をあきらめました。ここまでは、正しい手段に従って目的を果たそうとする姿勢は保たれていました。


 しかし、ここで目的のためには手段を選ばない手法を採るようになりました。閣議決定により実質的に憲法の内容を変えてしまうという手法を採りました。条件付きでありますが、集団的自衛権の行使を閣議決定したのです。そして事を円滑に進ませるために、内閣法制局の長官を自分と同じ考えを持つ人を任命しました。これまで内閣法制局の長官は法制局の中から任命されていましたが、その慣例を破り、自らの考えに近い人を選び、事が円滑に進むようにしました。ここにおいては、手段は選ばないというか、自分に都合のよい手段を選ぶという手法に舵を切ったように思えます。


 安全保障関連法案は数を頼みにして衆議院を通過しました。そこで思いがけないことが発生しました。礒崎首相補佐官の発言です。「法的安定性は関係ない」。後にこの発言に対して釈明をされましたが、この発言が本音から出た発言であることは誰の目にも明らかです。


 そして忘れてならないのは、法的安定性を軽んじたのが安倍首相自身です。集団的自衛権は認められないとの歴代の内閣が受け継いできた解釈を閣議決定で変更しました。つまり閣議決定をすれば憲法の解釈がころころ変わる前例をつくったことになります。首相が軽んじるのですから、首相の補佐官が法的安定性を軽んじる本音を出すことにためらいを覚えないのは当然です。


 閣議決定をすれば何でも変えられるとなれば、法的安定性が崩れることは明白です。安倍首相は礒崎発言を受け、法的安定性は重要であると語りましたが、自らが法的安定性を軽んじていることは明白です。


 私たち国民からすれば、自分がしていることと発言していることが矛盾し、目的のためには手段を選ばない立場を取る安倍首相を信頼することはできません。


 また、安倍首相は数を頼みに法案を参議院でも通過させようとしていますが、私は自民党の議員の方たちの本音はどこにあるのかと考えます。安倍首相が数を頼みにし、目的のためには手段を選ばない手法をとり続けているとき、それをよしとするのか、それはいけないと考えるのか、自民党の議員の方たちは問われているように思います。つまり、あなたも目的のためには手段を選ばないと考える政治家なのかどうか、法的安定性を軽んじても、目的を達成しようとする政治家なのかどうか。


 今の小選挙区制では、一つの選挙区において一つの政党からは一人の人しか立候補できません。自民党の執行部に異を唱えると次の選挙で公認されない可能性があるので、なかなか「違う」とは言いにくいという事情があることは理解できますが、自分の政治信念を曲げてでも、安倍首相のやり方を認めるのかどうか。私たちは見ています。自分の保身をはかる政治家なのか、それとも本当に日本国民のことを考えている政治家なのか。


 今の自民党はたがが外れて放言が次々になされています。良識を取り戻すことができるのかどうか、自民党は危機におかれているのではないでしょうか。目的のためには手段を選ばないで通そうとする安全保障関連法案は、撤回すべきです。