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隠退牧師 holala によるブログ

ネガティブ・ケイパビリティ

 1月3日の朝日新聞に「答えを急がない力」と題して二人の方のインタビュー記事が掲載されていました。最初の人は帚木蓬生(ははきぎほうせい)さんです。彼は作家であり精神科医です。

「『答えの出ない事態に耐える力』のことです。世の中は明確な答えのある問題ばかりではありません。むしろ人間社会は、解決できない問題の方が何倍も多いのではないですか。先が見えず、どうしようもない不安に耐えながら、熟慮する。答えが出なくても問題に挑み続ける力こそ、ネガティブ・ケイパビリティです」。

 帚木さんは『ネガティブケイパビリティー』(朝日選書)という著書の中で、ネガティブケイパビリティーとは「答えの出ない事態に耐える力」、「それは事実や理由をせっかちに求めず、不確実さや不思議さ、懐疑の中にいられる能力」と解説します。

 インタビューを受けたもう一人の人は、枝廣淳子さん。環境ジャーナリスト・翻訳家とあります。

「すごく矛盾した言葉ですよね。何かができる能力という意味の『ケイパビリティ』に、否定的な『ネガティブ』がついている。私たちは、『これが問題だ』『これが解決策だ』と、すぐに結論に飛びつきがちです。けれどもそこで答えを一度保留して、本当にそうか、違う見方はないか、と考え続ける。その力がネガティブ・ケイパビリティだと私は考えています」。

 この新聞記事を読んで、ネガティブ・ケイパビリティという言葉が私の心の中にスーッと入ってきました。今の私には大切な言葉だと思いました。

 たとえば説教の準備をしていて、どうしても理解しがたい聖書の言葉・箇所があったとします。その場合、注解書を調べ、その言葉がどういう意味なのかを調べます。そして分かったと思って説教を作ることが牧師なら誰にでもあります。でもそれは本当には分かったことにはなりません。間に合わせの説教になってしまいます。間に合わせの説教をして、それでおしまいというのではなく、理解しがたい聖書の言葉、箇所に向き合い、理解する努力をすること、それがネガティブ・ケイパビリティだと理解します。大切なことだと思います。

 ネガティブ・ケイパビリティとは「答えの出ない事態に耐える力」。時間をかけて、忍耐強く、理解できる時を待つ、その能力が、ネガティブ・ケイパビリティ。この能力があるから、忍耐して待つ中で答えが与えられるというのです。

 帚木さんは、その著書の中で、精神科医として働くとき、ネガティブ・ケイパビリティという言葉を知って「ふんばる力」が与えられたと書いています。大切な能力だと思いました。

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