イエス様が何千人もの人々を五つのパンと二匹の魚で満腹させた物語があります。その出来事のすぐ後で、弟子たちは舟でガリラヤ湖を横断しようとします。すると強い風が吹いてきて弟子たちはうまく舟を漕ぐことができず、悩みます。イエス様は湖上を歩いて弟子たちに近づきます。弟子たちは幽霊を見たのかと恐れます。
「わたしだ、恐れることはない」
とイエス様が語り、舟に乗られると風がやみ、舟は向こう岸に渡ったという物語です。
マタイ、マルコ、ヨハネ福音書がこの物語を書いています。この三つを比較すると面白いです。マタイでは、湖上を歩いてきたイエスを見て、ペトロが「わたしに命令して、水の上を歩いてそちらに行かせてください」とイエス様に頼みます。いかにもペトロらしい。イエス様が「来なさい」というとペトロは舟から下りて水の上を歩き出しますが、強い風に気づいて怖くなった途端、沈みかけたというエピソードを書いています。
マルコでは、イエスを見て幽霊だと思った弟子たちは大声を上げたとあります。ひどくおびえて叫んだのです。
ヨハネ福音書の記述は、素っ気ない記述でドラマチックな表現はありません。「彼らは恐れた」としか書かれていません。この素っ気ないヨハネの記述を読みながら、なにを読み取ったらいいのか、と思いめぐらしました。そして思ったことは、イエス様は恐れの中にある私たちに対して「わたしだ、恐れることはない」と今も私たちに語りかけるお方だということでした。
私は今、恐れの中にはいません。色々な恐れから解放されました。しかし病気になって不安に陥るとき、また死の病の中におかれたときなど、恐れに直面するようなことがあったなら、「わたしだ。恐れることはない」とのイエス様の声を聞きたいと思いました。
私はイエス様の言葉を聞くことが平安をもたらすと信じています。死の床についたときには、このイエス様の言葉を聞き続けたいと思います。