「A長老、ご無沙汰しています」
「Cさん、こんにちは。礼拝にはいつもおいでになっているので身近に感じていますよ」
「ありがとうございます。A長老とは、キリスト者は聖なる者であることについてお話しをさせていただきました。でも私にはむずかしいというか、ピンとこないというか、私の信仰はまだ初心者というか、ついていけないという印象を持ちました」
「そうでしたか」
「私は神さまを信じ、穏やかな生活を送ることができればよいと考えていました。信仰が心のよりどころとなることを願っています」
「そうでしたね。大学生と高校生の息子さんはお変わりありませんか」
「はい、幸いに神さまに守られて過ごしています」
「それできょうは?」
「はい、先日の礼拝説教で、アブラハムのことが語られました。神さまの呼びかけを受け、それに応えて、アブラハムは行き先を知らずして旅立ったという話しです」
「はい、神さまの約束を信じて、アブラハムは旅立ったという話しでしたね」
「それを聞いて私は少し不安になったのです。私は礼拝で毎週説教を聞いていますが、自分が関心の持てる話しというか、自分に関係のある話しは耳を傾けますが、そうでない話しは適当に聞き流していました」
「そうですか。それでどうしましたか」
「礼拝で色々なお話を聞いているうちにそれでよいのか、と考えるようになったのです。アブラハムの話もそうでした。長年住み、慣れ親しんだ人たちもいる場所を離れて行き先も知らずに旅立つなんて、信じられません。でも牧師先生は、それを信仰の事柄としてお話しされたわけです。そして皆さんも信仰の事柄として聞いています。でも自分には関係ない話しとして聞いている自分がいて、それでよいのかと思ったのです」
「なるほど。聖書に書いてあるのは昔の話しですし、自分に関係のあることとして説教を聞くのは簡単ではないかもしれませんね」
「はい、そうなんです。でも毎週の礼拝説教を聞いていると、私が関心を持てる話しだけではないです。となると、私の側に信仰者として何か足りない点があるのではないか、と不安になってきました」
「なるほど。それでどうしたいのですか」
「どうしたらいいのか、よくわからないでいます」
「なるほど」
「何かヒントというか、アドバイスなどあるでしょうか」
「そうですね。Cさんはもしかしたら分岐点に立っているのかもしれませんね」
「どういうことですか」
「Cさんは、信仰をよりどころにしたいとおっしゃっていましたね」
「はい、神さまを信じ、神さまをよりどころにしたいと願っています」
「そして神さまに祝福された人生を送りたいわけですね」
「はい、その通りです」
「実はここに分岐点があるんです。実は私もこの分岐点を牧師先生から教わったんです」
「それはどんな分岐点なんですか」
「どちらの道も神さまをよりどころとし、祝福された人生を求めます」
「それならどちらを選んでもいいわけですか」
「私たちには自由がありますから、好きな方を選ぶことはできます。分岐点ですから二つの道の中から選択できます」。
「それは何ですか、教えてください」
「分かりました。Cさんは神さまにお祈りをされますよね」
「はい、もちろん。神さまに色々お願いをします。イエス様も求めなさい、そうすれば与えられると教えてくださっています」
「私たちは神さまの祝福を求めます。そこで鍵となるのは、私たちにとって何が神さまの祝福か、ということです」。
「神さまの祝福って、私の願いを神さまが聞いてくださることではないのですか」
「人には、自分の願いがあります。自分の人生についても、こうなればいい、ああなれば良いという願いがあります」
「そうです」
「そこで神さまに自分の願いを聞いていただき祝福していただくという道があります」
「それで何か問題があるのですか」
「実はもう一つの道があります。神さまは私たちに対して最善の人生を用意しておられるので、それを求めるという道です」
「神さまが用意しておられるのですか」
「それはわたしたちが期待するものと一致するとは限りません」
「それじゃあ困りませんか」
「でも、それがあなたの願う人生よりはるかによい人生だとしたらどうしますか」。
「えっ、私が願うよりはるかによい人生があるというのですか。そんなこと考えたこともありません」
「みんな最初はそうです。誰だって自分の願う人生を送りたいと思います。人はだれでも自分の思い通りに生きていきたいと願います。夢を実現させたいと考えます」
「でもそうじゃないんですね」
「はい。神さまはあなたのために、あなたにとって最善の人生を用意しておられます。それを信じるかどうか。これを信じるのがもう一つの道です」
「いきなりそんなことを言われても」
「そうですね。私も牧師先生から最初に言われたとき、すぐに信じることはできませんでした。そこでアブラハムです。彼は神さまの呼びかけに答えて、旅立ちました。言うなれば、神さまが用意してくださる最善の人生にとび込んだのです。アブラハムの話が身近になりませんか」
「家に帰り、創世記からアブラハムの話を読んでみたいと思います。今日は有難うございました」