私がかつて仕えた御殿場教会の近隣にある神山(こうやま)教会は、ハンセン病の療養施設の中にある教会でした。在園の方は皆病気は治癒しています。この教会は施設在園者が教会員です。在園者の牧師先生がおられました。御殿場教会との交わりがすでにあり、私は定期的に訪問し集会の奉仕をしました。私と妻と幼い子ども、そして教会員数名で訪問しました。礼拝をささげ、終わればお茶を飲んで交わりの時を持ちました。
私にとってハンセン病の元患者の方に会うのは初めてでした。集会を共にし、交わりの時を持つ中で親しくお付き合いをしました。発病し、隔離され、施設での生活を余儀なくされた方たちでした。生涯を施設で過ごすことを受け入れておられました。
ある時、礼拝を終えてお茶を飲みながら聖地のことが話題になり、私も「いつかイエス様の歩まれたところを見に行きたいとの希望を持っている」と話しをしました。するとしばらくして、在園の教会員の方が牧師館に訪ねてくださって、「聖書の舞台を是非見て、説教に生かしてください。これを聖地旅行のために使ってください」と厚みのある封筒を差し出されました。あまりに突然で固辞しましたが、「聖書の舞台を是非見て、説教に生かしてください」と強くおっしゃったので、ありがたくご好意を受け入れました。
旅行は3月初めと決まりました。私たち夫婦が出かけるとなると、下の3人の子どもが家に残ることになります。教会員のSさんが牧師館に泊まってくださり、留守を守り子供たちの世話をしてくださいました。そのおかげで旅行が可能となりました。
本来なら、子どもたちがもっと成長してから行くべきだったのですが、神さまが聖地旅行が可能となるように導いてくださいました。私の牧師人生の中では、忘れがたい出来事でした。神さまの恵みに感謝しても感謝しきれません。このような恵みをくださる神さまを何と呼んだらいいのでしょうか。