「A長老、うれしいことがありましたので、お話ししたいと思いました」
「うれしいことですか。お聞きしたいですね」
「キリスト者は新しく生まれた者であると教えていただきました。新しく生まれた者として生きるために聖書を読むことを教えていただきました」
「そうですね。聖書を読むところにキリスト者の新しさがあります」
「それで聖書、特に創世記を読んでみました」
「前回お話ししてから一ヶ月ほど過ぎましたね。創世記を全部読まれたのですか」
「はいちょっと頑張りました」
「それはすばらしい。それでうれしいことって何なんですか」
「はい、神を信じる者として神がいかなるかたかを知ることが大事というA長老の言葉が心に残っていました。それでそのことを心に留めながら読んでみました。最初に心に残ったのは創世記12章です」
「アブラハムの旅立ちの箇所ですね」
「はい、そこを読んで気がついたことがあるんです」
「なんですか、それは」
「はい、神さまというのは、約束をなさる方だと気づきました」
「そうですか。それは大切なことに気づかれましたね」
「はい、神さまはアブラハムに『あなたを大いなる国民にし/あなたを祝福し、あなたの名を高める』と語りました」
「それで神さまはアブラハムに約束をしたと思ったわけですね」
「はい、それで神さまは、信じる者に約束をする方なのではないかと思った次第です」
「すばらしい気づきです」
「でもアブラハムに対する神さまの語りかけの最初の言葉は命令だったのです。『あなたは生まれ故郷/父の家を離れて/わたしが示す地に行きなさい』とお命じになりました」
「それで」
「私は思ったのです。神さまはアブラハムに命令されましたが、同時に約束も語られているんです。それでこれはどういうことかと少し思いめぐらしました」
「なるほど、それでどうなりました」
「神さまの命令に従わなければ、その約束は実現しないと思いました。神の約束は、神さまの命令に従ってこそ実現すると考えました」
「それはすばらしい気づきです。聖書を読んで気づきを与えられると聖書を読むことが楽しくなりませんか」
「はい。神さまの約束には命令が伴う、そんな原理、法則があるように思いました。今まではただ聖書を読むだけでしたが、神さまに教えていただいたような気がしてうれしかったです」
「聖書を読む前に聖霊の導きをお祈りしましたか」
「もちろんです」
「Bさんのそのような気づきは、聖霊の導きだと私は信じます」
「そう言っていただけるとうれしいですね」。
「その他には、なにかありましたか」
「まだ色々ありますが、約束と言えば、ヤコブに対する神さまの約束です」
「どういうことですか」
「A長老は知っておられると思うので簡単に言いますと、ヤコブが家出をした日の夜のことです」
「父親の財産の相続をめぐってヤコブは兄のエサウを怒らせましたね」
「はい、兄が自分のことを殺そうと考えていることを知り、家出をしました。その晩は野宿をしました。すると夢の中で神さまがヤコブに語りかけるのです。ちょっと聖書を開いてみていいですか」
「はい、どうぞ」
「神さまの言葉がこう書かれています。『わたしはあなたと共にいる。あなたがどこへ行っても、わたしはあなたを守り、必ずこの土地に連れ帰る。わたしは、あなたに約束したことを果たすまで決して見捨てない』。すばらしい約束だと思いました」
「そうですよね」
「ヤコブは兄に対してズルをして長子の特権を兄から奪いました。そんなヤコブに神さまは約束を与えられるのです。これには感激しました。神さまの前に立派に生きている者に神さまは褒美を与えられる、約束を与えられるのではないかと思っていましたから」
「そうですね。そう考えがちですよね」
「ああ、これが恵みなんだと思わされました」
「よかったですね。ヤコブの場合は、約束に伴う命令はあったのですか」
「そのことは少し考えたのですが、この場合、ヤコブは家出をしました。彼は母の兄、おじのところに行こうとしています。だから特に命令はありませんが、大丈夫だよ、安心して行きなさいと神さまがおっしゃったのではないかと受けとめました」
「Bさん、すばらしいですよ。そんなふうに聖書を読めるなんて」
「わたしもうれしかったので、A長老にお話ししたかったんです」
「ありがとう。せっかくだから一つだけお知らせします。神さまのアブラハムに対する約束、それはいつ実現したと思いますか」
「実現しないなら約束に意味はないですね。え、えっ、えっ。アブラハムが生きている間には実現しない約束じゃないですか。そんな約束をアブラハムは信じたのですか」
「Bさんはどうですか。自分が生きている間に実現しない約束、信じる気持ちになりますか」
「う~~ん。わかりません」
「実はBさんは信じているんですよ」
「本当ですか。何だろう」
「死んだら神さまの国に迎えられる約束です」
「あ~なるほど。そうですね」
「うれしいお話し聞かせてくださり、ありがとう。また続きを聞かせてください。神さまの導きをお祈りしています」
「ありがとうございます。それでは今日は失礼します」